モンゴル国 子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト
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プロジェクトの背景・実施方針
 
1.プロジェクトの背景
 モンゴル国では、1990年以降民主化による価値観の転換・市場経済化に伴う経済の混乱が生じたことに加え、1991年のソ連邦の崩壊に伴う同国からの援助停止により政府財政が逼迫しました。これらの要因が複合して、教育分野においても教育行政能力の不足、教員の質の低下、教育インフラの未整備、高等・専門教育の未発達、地方における就学率の低下等様々な問題が生じており、特に教育分野での基礎となる教育行政能力の向上、地方教育行政に携わる人材の育成が求められています。
 教育セクターの改革により2005年9月から新教育スタンダードが導入され、基礎教育課程は10年制から11年制に移行しました。これに伴い、入学年齢が8歳から7歳へと引き下げられるとともに、総合学習、自然学(総合理科)等、新たな教科が導入されることとなりました。また、教員は従来の暗記中心の指導法から子どもの発想や思考を促すような「子どもの発達を支援する指導法」を行うことが期待されています。しかし現職教員は、従来の暗記中心の教授法で養成されているため、「子どもの発達を支援する指導法」の具体的な方法が分からず、授業に活かせないでいます。また、新スタンダードは大学教授が中心に策定したため、内容がアカデミックで現場の教員が理解しづらいという批判がなされています。
 モンゴル教育大学の「初等教育指導法開発センター」「数学教育指導法開発センター」「IT教育指導法センター」及びモンゴル国立大学の「理科教育指導法開発センター」や教育研究所によって、諸外国の例を参考に、新しい指導法の研究が行われていますが、指導法改善について、理数科を中心に途上国への協力の実績がある日本政府に対して支援要請がなされました。JICAはこの要請に基づき、プロジェクト事前評価調査を実施し、2006年5月にプロジェクト実施に関するR/Dへの署名が行われました。

2.プロジェクトの位置づけと基本方針
 本プロジェクトの目的は、モンゴル教育大学及びモンゴル国立大学の附属機関である4つの指導法開発センター(初等教育センター、理科教育センター、数学教育センター、IT教育センター)において、指導法・指導書の開発を行うとともに、モデル県・モデル校において試行・改善を行うことで、従来の暗記中心型の指導法から、生徒が自ら学ぶ力を引き出す、子どもの発達を支援する指導法に改善することです。
 本プロジェクトの対象は、総合学習、算数・数学、理科、ITの4科目であり、成果品としても4科目の指導書が想定されていますが、指導法の改善は、これら4科目に限定されるものではありません。子どもの発想や思考を重視した指導法として全ての科目に共通する包括的な指導法の概念・手法の確立を意識し、プロジェクトを実施する必要があると考えられます。
 本プロジェクトの上位目標は、「子どもの発達を支援する指導法」がモデル県において普及されることです。さらに上位(スーパーゴール)の目標としては「子どもの発達を支援する指導法」がモンゴル全国に普及されることであると想定します。この上位目標およびスーパーゴールを視野に入れて、上位目標達成のための第一ステップとして本プロジェクトを位置づけます。

本プロジェクトの実施方針は以下のとおりです。

(1) 「子どもの発達を支援する指導法」導入の意味を十分理解してもらう
1) 日本の教育課程の策定の変遷および特徴を伝え、何を目指して指導法を改善するのか、現場の教員等からの理解を得やすくするよう支援する。
2) 新指導法の導入・定着と密接に関連する学習指導要領、教科書、指導書の全体構造を伝える。
3) 生徒の発達や学習習慣や、各教育段階が求める学習目標、教員に求められる能力など初等と前期中等の教育段階による違い・特徴に配慮する。
(2) 実践的な指導法・指導書の開発・導入・定着を行う
1) ワーキンググループ・勉強会・ワークショップでの活動を通じ、中央・アカデミア(教育省、大学・指導法開発センター)と教育現場(教員、指導主事など)が協働する。
2) 概念的な理解にとどまらず、@ニーズ調査、A既存の指導書、教材レビュー、B学校現場における試行及びモニタリング・改善といった一連の活動を通じ、現場で実践可能な内容とすることを最優先する。
3) モデル校として、県レベル(アイマグセンター・レベル)のみならず、ソム(村落部)レベルの学校も対象とするなど、地域差に配慮し、指導書に反映させる。
4) 教科書に付属するのではなく、異なる教科書にも活用できるよう指導法に焦点をおいた指導書の作成を行う。
5) 「日本国内出張」(本邦研修)においても、授業の現場・実際から学ぶことに重点をおく。
(3) プロジェクト効果の強化とプロジェクト後の展開を視野に入れる
1) 指導・学習と評価は表裏一体のものであることから、「子どもの発達を支援する指導法」に基づく新指導法導入にともなう「学習評価」について可能な範囲で紹介する。
2) 授業改善を目的として日本の学校で教員が日常的に実践している「授業研究」の仕組みを紹介し、モデル校での試行とプロジェクト成果の普及に活用する。
(4) モンゴル政府の制度として、指導書開発の経験と成果が活用・普及されるような体制を構築する
1) プロジェクト終了後の円滑な実施を目的に、市・県教育文化局による既存の現職教員再研修システムを活用し、新指導法の研修や指導書試行の研修を行う。
2) プロジェクト効果の広がりの確保のためJICA「教員再訓練プロジェクト」(2003年〜2005年)の成果(リソースパーソンや帰国研修員間のネットワーク)を活用する。
3) 県レベルの普及を確保するために、県の指導主事の能力強化を重要視し、指導法・指導書の開発、試行、モニタリング、改善の全プロセスにおける参画を確保する。
 
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※本プロジェクトは、コーエイ総合研究所がJICAより委託されて実施しているプロジェクトです。